こんにちは。今日も体重が増えていないことに喜びを感じている ゆめの です。
本日は、読書の感想です。
【そして、バトンは渡された 瀬尾まい子著】
私は最初、本書を「不幸な境遇にも耐えた女の子のサクセスストリーかな」なんて思っていました。
しかし、その装丁からはどうにも「不幸感」が感じられないのです。興味を持ちました。
本屋大賞を受賞したことも相まって、購入をしました。
- 追われるような日常生活を送る中で、普通の幸せと感じられる作品
- 優しい気持ちになれる作品
もし、「仕事疲れた…難しい本は読めないけど、頭が冴えて眠れなさそう」という夜があったら、読んでみてはいかがでしょうか。
【著者、瀬尾まい子さんについて】
- 子育て中
- 元中学校の国語教師
- 教師の仕事の傍らで執筆活動をされていた
- 穏やかで優しそうな印象(インタビューの様子から)
この背景からもわかる通り、全体として言葉が優しいです。難しい・易しいではなく、優しいのです。読み進めていくほど、その優しさに包まれるような感覚になりました。毎晩、就寝前に読むと「ほっとした気持ち」になって、安眠できます。
さすが、元国語の先生というだけあり、文章の読み易さも感じます。また、中学生の生活の様子や担任教師との距離感など、学生生活の描写が細かいです。
【中学生女子たちの恋愛あるある】が、リアルに描かれています。
(自分の好きな人に告白できないからって友達に代理告白させる女子が実在するんですよ…)
もし、瀬尾さんが私の担当教員だったら…きっと【どうしても重要な相談をする先生】になってくれたかな、と思います。
【ストーリー】
17年間(幼少期~高校生)に4回も親が変わる話です。すべての家族の深い愛情と共に、思春期を過ごし成長していくお話。
母2人
- 生みの母は幼少期に他界
- 次の母(梨花)は、華やかでいわゆる【ゆるふわ】の女性(私のイメージ)です。若い母親ですが、優子と共に過ごす日々を大切にしており、心から優子を愛してくれます。それにもかかわらず、3番目の父の前から突然姿を消してしまします。思い立ったらフラリといなくなってしまう自由な女性。
父3人
- 実の父親。実の父は母の他界後、梨花と再婚。しかし、突然、ブラジルへ転勤になります。優子は実父に着いてブラジルへ行くか、梨花と一緒に日本に残るかの決断を迫られます。葛藤の末、優子は実の父親と離れ梨花と一緒に暮らすことを選択します。
- 2番目の父、泉ヶ原氏。大富豪。梨花はブラジルに行った優子の実父と離婚し、泉ヶ原氏と再婚。大富豪ゆえ、梨花にも優子にも不自由ない生活をさせてくれます。しかし、突然、梨花が泉ヶ原氏と離婚してしまい優子とは離れることになります。
- 3番目の父、森宮氏。梨花が再再婚した相手です。東大卒・一流企業勤務のエリート。ちょっと世間の間隔とはズレている性格ではあるものの、きめ細やかな父親になってくれます。
このように、様々な大人たちの間で主人公・優子の人生が繋がれていくのです。
まさにバトンリレーのように。
【感想】
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不幸女子のサクセスストーリーではありません。
むしろ、大人たちの愛情を素直に受け取る優子の心に触れ、私自身も優しい気持ちになりました。
優子はとにかく他人の心に寄り添おうとするのです。親が変わることに対し、不幸と感じるのではなく、どの大人からも素直に愛情を受け取るのです。
読み進めるほど【不幸な境遇からのサクセスストーリーではない】ことに気づきます。
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一押しはキャラクターは天然な森宮さん
父3人の中でも、特に森宮さんが一押しのキャラクターですね。
ちょっとズレた可愛げのある優しい言葉や振る舞いに癒されます。
森宮さんの天然エピソードとして、始業式の日の朝食にカツ丼を用意してくれたり、優子の結婚相手に急に頑固になって反対したり、美味しそうなスイーツを買ってきてくれる女子的な一面にもくすっと笑ってしまいます。
森宮さんは、女子的でちょっとオタク気質なのかもしれませんが、愛らしいキャラクターの持ち主です。
作中の森宮さんの一言。
明日が2日くるようになった
優子と一緒に暮らすようになった森宮さんは、それまでの独身時代とは打って変わり、自分以外の他者を心から心配したり、喜んだりするようになります。
その毎日のことを、「明日が2日くる」と表現するのです。自分の1日と愛する娘(優子)の1日。
それほどの愛情をもって優子と一緒に生活していたのです。
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ストーリーの伏線回収
リレーのバトンのように家族を渡り歩いてきた優子は、大人になり、結婚し、自分の意志で姓名を変えることになります。結婚を期に、自分に関わってくれた人たちと再会していくエピソードもあります。その中で、様々な伏線が回収されていきます。
ブラジルへ転勤になった父は優子のことを忘れてしまったのか?
ふらりと姿を消した梨花はどこにいるのか?
突然一緒に暮らせなくなった大富豪の泉ヶ原さんは元気にしているだろうか?
森宮さんはなぜ梨花と優子を受け入れたのか?
森宮さんは梨花が突然自分のもとから去っていったことを責めないのか?
テンポよく物語が進んでいくのも心地よいです。
【最後に】
瀬尾まい子さんの優しい言葉には、仕事でつかれた心をほっとさせてくれる柔らかなパワーがありました。幸せな時間をありがとうございました。