【明日の食事】読み終えた感想。母親のリアルな生活を疑似体験しました。
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椰月 美智子著、【明日の食事】を拝読しました。
誰にでも起こりうる困難を乗り越えようとする、4人の母親の気持ちを疑似体験できた作品です。
ストーリー
本作、【明日の食事】とは、どんなお話なのでしょうか。
物語は3人の【石橋ユウ】という名の少年が登場します。優と悠宇と勇の3人。そしてそれぞれの母親。
石橋あすみと優、石橋留美子と悠宇、石橋加奈と勇。
そしてもう一組、虐待死という残酷な結末を迎えてしまった石橋耀子(ようこ)と祐。この石橋耀子が息子の祐を虐待死させてしまうニュースにより、他3組の親子が繋がっていくストーリー。
もしかしたら、石橋耀子が起こした事件は「自分の身に起こっていたかも知れない…」と。しかし、3組の親子は居住地も違うし、ライフスタイルも違い、接点はない。
3人の石橋ユウ親子にはそれぞれ大きな問題を抱えています。
- 石橋あすみと優。優は優等生。勉強もでき、決して他人を傷つけることなど思いもよらなかった母・あすみ。しかし、優はクラスメートをいじめ、優の祖母(認知症)を足蹴にし、浮気をしている父を侮蔑する。
- 石橋留美子と悠宇。この家庭では、夫婦間に距離がある。悠宇には弟・巧巳がいる。ふたりともやんちゃですぐに取っ組み合いをする男児兄弟。留美子の夫(豊)はフリーカメラマンで、育ち盛りの子供2人がいるというのに、仕事が減っても無気力のまま。徐々に自分の仕事を成功させていく留美子に対し卑屈になっていく。豊は子育てには非協力的なだけでなく、自分の仕事への不満や現状から目を背けたい気持ちから子供たち(悠宇と巧巳)に手をあげるようになる。
- 石橋加奈と勇。この親子に父親(夫)はいない。シングルマザーで経済的にかなり困窮した生活を送っている。加奈の弟(正樹)は、一時期半グレ状態になり、加奈が身を粉にして働いて作り上げた貯金さえも奪っていく。経済的な貧しさを感じさせまいと、加奈は必死で働き、勇と旅行に出かけたり、勇の好きなサッカーを続けさせるための努力をし続ける。
3つのタイプのユウ。ある日、「イシバシ ユウ」という少年が虐待死したというニュースが世間を賑わせる。犯人は母親だという。
本書内で描かれる、どの「石橋 ユウ」殺されてしまったのか?どの母親が「石橋 ユウ」を殺めてしまったのか?
日々、9歳の男児を育てながら悩み、喜び、自分の夫や義母や肉親と対峙する3人の母親の心情を描いたストーリーでした。
感想
誤解を恐れずに感想を述べます。
ハッキリ言って、この3家族における「父親」の存在があまりにも弱すぎます。そして自分の子供に対して無責任すぎるのです。
世の中の父親って…そうなのでしょうか?
どの「イシバシ ユウ」の父親も、父親としての覚悟が無いように思います。
優の父親は、育児も家事も認知症の母の介護も、妻に押し付けて自分は会社の後輩と浮気するし、
悠宇の父親は、自分の仕事が上手くいかないイライラを子供にぶつけて手を挙げ、妻が仕事を始めて自立していく姿を応援するでもなく、日に日に卑屈になっていくし、
勇の父親は、勇が生まれてすぐに「他に好きな女性ができた」といってそそくさと逃げてしまうのです。
まぁ…あきれた。呆れはててしまったよ。
これは世の中の「家族あるある」なんだろうか?
独身の私にはよく分からない…
だが、大なり小なりこういった事件は家庭内で起きているのだろう、とは思うのです。
残念ながら、結婚前の恋愛時期では男性の本性なんてわからないです。(女性も同じかも知れませんが)
男性の本性は1ミリも分からない。もしかしたら、その人自身も自分の本性なんてわからないのかもしれない。
結婚して初めて、困難が立ちはだかって初めて、上記のような無責任オトコの本性を知ることとなるケースが多いのではないか、と思うのです。
私が思う結婚とは
結婚は大きな大きな賭けだと思うのは私だけでしょうか。
私の友人の多くは結婚3年目の頃になると、夫への不満・失望を強烈に感じ始めるようです。その愚痴を聞くたび、「あぁ、やっぱり独身でいよう」と何度も心に決めてきたものです。
本当に好きな人と一緒になったはずなのに、夫への不満をぶちまける女性の心の変化は驚くばかり。
友人の夫への愚痴を聞いたあと、私はいつも「きっと明日は彼女も夫をまた愛しなおすだろう、私に話さないだけで本当は尊敬している部分もあるのだろう」と信じるしかないのです。
そうでなくては、結婚を夢見ていた頃の自分が情けなくなってしまうから。
それにその友人も「夫を尊敬しなおしたい」と思っているように見えるから。
きっと結婚は人生の振れ幅が大きくなるのだ、と思っています。喜びの度合い、辛さの度合いが独身よりも大きいのでしょう。
いずれにしても、他人の人生と自分の人生を交わらせる【結婚】への恐怖はぬぐい切れないものです。
3人のユウ
3人の母親はそれぞれのキャラクター・立場の違いはあれど、とにかく息子たちを心から愛して、信じています。
完全に私の主観ですが、もっとも心が満たされているという意味では、石橋留美子・勇の親子が幸せなのではないか、と思うのです。
石橋留美子・勇の家族は、経済的に困窮していても、ふたりで支えあい、毎日毎日包み隠さず愛情を伝えあっているように感じました。
母から息子への愛情だけでなく、息子も母親・半グレの叔父に対し、素直な心で接していると思うのです。
勇は、クラスメートの嫌がらせに屈することもなく、母に迷惑をかけないように、と健気なのです。自分なりの価値観をもった、最も大人びた「イシバシ ユウ」君。
私は、彼がどうか将来自分の夢を叶えてほしい、そのあかつきには、勇が母・加奈を守ってあげられる存在になってほしいと心から願いました。
3人の「イシバシ ユウ」の中で、私が友達になりたいと思ったのは「石橋 勇くん」でした。
母になる
本書を読み終えた後、(最初から最後まで一気読みしました)、
「あぁ、母になるって大変。とてつもないエネルギーが必要で、自分の人生が変わってしまうんだな」と思いました。
生涯独身を決めている私にとっては、3人の母が「とてつもない苦労をしている」ように感じたのです。
私にその度量があるだろうか、なんて考えこんでしまいました。
私の母も、母になった妹も、世の中の大勢の母親さん達も、こういった悩み・苦労を感じながらも、子どもから多くのことを学んでいるのかな?と思います。
最後に
本作品は、独身の私に「母になる疑似体験」をさせてくれました。
こうやって、小説は自分以外の人の気持ちになったり、生活を思い描いたりできるのが楽しみのひとつです。
他の人の人生をほんのひととき生きられるような、そんな感覚になります。
では、また今日も独身生活にまい進しようと思います。