ゆめのブログ

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災害時の薬局業務と、万が一の備え。モバイルファーマーシーを見学した感想。


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本日は3月11日。

東日本大震災の記憶が蘇ります。

 

それにあたり、地元の防災イベントで

モバイルファマーシーを展示する企画を行っていました。

 

私も見学に行ってきました。

また、改めて災害薬学について学びなおしました。

 

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モバイルファーマシーって何? 

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移動型の薬局です

 

薬局機能を搭載した機動力のある災害対策医薬品供給車両です。
ポータブル発電機、

ディープサイクルバッテリー、

ソーラー発電機、水タンク等を搭載しており、

電力や水の途絶えた被災地でも

自立的に調剤作業と医薬品の交付が行えます。
キャンピングカーを改造した車両で、

乗車定員は3名、燃料は軽油、燃費は約9km/ℓ程度で、

普通免許で容易に運転できます。

 大分県薬剤師会HPより。

 

要は、【調剤室を備えたキャンピングカー】です。

普通運転免許でも運転できるのです。

 

 

被災時の薬局内は

災害時、被災した薬局の中は文字通り、グチャクチャです。

棚の中にしまわれた多くの薬は散乱し、

床や調剤台に投げ出され、散乱してしまっています。

足の踏み場もないくらいになります。

 

これは、私が就職したばかりの頃、

実際に東日本大震災の時に経験しました。

 

勤務先の薬局で地震が起きた際に、

漢方薬を配置していた棚が倒れてきたのです。

また、薬をしまっていた引き出しは勝手に空いてしまい、

調剤棚がそのもの倒れてくるのではないか、

と怖い思いをしました。

 

幸いにも、

私の勤務先では漢方薬の棚が倒れるだけで済んだのですが…。

薬の棚そのものが全部倒れて、中の薬が散乱してしまったら。

 

地震が収まった後、調剤なんてできない…

 

目の前にいる待合室の患者さんの分の調剤も

不可能になってしまう可能性があります。

 

停電

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これが作れない!

当時、最も悩まされたのは停電でした。

お会計の計算も、

薬歴(お医者さんのカルテにあたる記録のこと)を書くのも、

粉薬を分包(一回分ずつに分ける作業)するのも、

PCや分包機といった機械を使っています。

 

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分包機

停電が起きると、機械が使えなくなるのです。

機械が使えない薬剤師はただ白衣を着てるだけの人。

 

本当にやれることはないのか?

と本気で考えるようになったキッカケでした。

 

ちなみに

現在60代の薬剤師の先輩方は、

分包機もPC作業もない時代を経験していらっしゃいますので、

このような状況でも、冷静に対応できていたと聞きました。

 

手書きの薬袋、

天秤を使った薬品の秤量も

分包紙の折り方も実務経験があるので、

あまり慌てなかった、と。

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薬包紙の折り方

こんなアナログな方法もあるのです。

(学生時代に習ってはいましたが、実践でできるかどうか…不安)

 

避難所での調剤

 

このように被災時には、停電が起き、薬は散乱して

自分の薬局での調剤は困難を極めます。

 

自分の薬局を片付けて復旧作業をするのも急務ですが、

その前に、避難所での生活が先に始まります。

 

もちろん避難所も停電しております。

そこで活躍するのがモバイルファーマシー。

300種類の在庫の中から、お薬を用意できます。

また、自家発電で分包機も動きます。

 

けがをした方へのお薬(消毒薬・化膿止めの塗薬)の提供だけでなく、

不安・恐怖による不眠のための薬、

狭心症・喘息発作のための薬、のような

急に薬が必要になる状況にも対応できるのです。

 

薬剤師の能力

 

万能に見えるこのモバイルファーマシー。

在庫を置けるのは300品目。

しかし、世の中に流通している薬は何千・何万とあります。

避難所生活が数日を過ぎた頃には新たな問題が発生します。

 

避難所に来られる方々の

普段飲んでいる薬を飲み終えてしまった時、

家にあった薬を避難所に持って来られなかった時、

家にあった薬が自宅と共に失くなったしまった時、

代わりの薬を用意しなければなりません。

すべての方に、まったく同じ薬を用意してげることは不可能です。

 

300品目の中から、代替薬を探すのです。

ここで薬学的な知識が発揮されます。

いかに、目の前にいる患者さんが必要としている薬に代る薬を探し、

避難所にいる医師に提案するのです。

 

普段から、この薬の代替え薬品は?

代替え薬品に変えた際、他の飲み合わせは?効果は?

特に飲み合わせは悩むところだと思います。

 

血圧の薬だね!じゃぁこれを代わりに!

 

と、気楽に決められることではありません。

多くの患者さんは、複数種類の薬を同時に服用していますから。

 

患者さんにも備えてほしい

 

確かに、モバイルファーマシーは

被災時の医薬品提供には大活躍するでしょう。

でもそれは、あくまでも道具であって、

それを使う薬剤師が、知識と経験を駆使して初めて、

患者さんへの安全な医療提供につながると考えています。

万能ではないのです。

 

停電もなく、医薬品の流通が安定している平穏な状況のうちに、

常に万が一に備える必要があると考えます。

 

それには患者さん自身にも災害への備えをしてほしいと考えています。

 

患者さんにお願いしたいこと

  • 2週間程度は余裕をもって受診していただきたい
  • 余分なお薬は、被災時にすぐに持ち出せるように整理していただきたい
  • お薬手帳もすぐに持ち出せるように携帯していただきたい

お薬手帳があれば、

普段の薬が正確に分かり、すぐに用意できるかも知れません。

代替品を探す時間も短縮できます。

 

お薬手帳がないと、

いままでの治療の経緯が分からず、

避難所で一から診察することになってしまい、

時間がかかってしまいます。

 

最後に

 

災害時に薬局に甚大な被害が起きた時は、

想像以上に悲惨な状況を生み出します。

 

普段、当たり前のようにもらえていた薬が

手に入らなくなることは、命の危険に直結します。

 

地震から生き延びても、

その後、持病の悪化により体調が悪くなってはならないのです。

 

災害時のサポート体制、

各医療従事者の知識は日々進化しています。

 

それと同時に、

患者さん自身にも情報発信を続けていく必要があると感じました。

 

自然災害が起きないことを願いながらも、

万が一に備えてもらえるよう、私も日々勉強しております。