ゆめのブログ

30代女の独身生活ブログ

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深夜薬局を読み終えて感想。中沢さんに救われたのは、歌舞伎町の住人だけではなかった。


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先週、外回りの間にふらりと寄った書店で見つけた本。

 

深夜薬局-歌舞伎町26時、いつもの薬剤師がここにいます

 

一気に読み終えました。

 

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深夜薬局とは

 

歌舞伎町に実在する薬局のこと。

ニュクス薬局さん。

営業時間は夜8時から翌朝9時まで。

中沢さんという男性の薬剤師がひとりで経営されています。

この中沢さん。なんと、私と同い年!

大学時代から、独立開業を目指していたのだそう。

 

歌舞伎町という土地柄、

薬局を訪れる方はちょっとディープな悩みを抱える方が多いそうです。

性風俗嬢、

キャバクラのボーイさん・お姉さん、

刑務所を出所した方などなど。

 

薬学部卒、調剤薬局勤務の生活では

関わることの少ない方々が薬局を訪れてくるのです。

 

中沢さんの信念

 

この書籍を読んで、

中沢さんの患者さんとの向き合い方に共感しました。

 

中沢さんは「聴き役」に徹することが多いといいます。

自らアドバイスをしたり、意見をすることはないのです。

ただし、「基本的に」。

 

コロナ渦で仕事が減った女性からAV出演するか否かという悩みを

相談された時、中沢さんははっきりと「やめておいた方が良い」と

助言します。

 

これから先、その女性が本気で恋をして、

結婚することになったときAV出演した過去があったら、

それが彼女にとって「恐怖や怯え」になってしまうと思ったから。

 

中沢さんは「これだけはダメ」というラインをしっかりお持ちで、

それを超えようとする人には、

ストップをかけるような助言をします。

 

このように、自分の軸をもちながらも柔軟に

患者さんと対峙する中沢さんの姿勢に共感できたのです。

 

おせっかいとの線引きが難しい

 

私も10年薬局薬剤師をしていて思うことがあります。

助言やアドバイスをするか…決められないことがあるのです。

自分の価値観では、「これはダメ」と思っても、

患者さんにとっては「余計なお世話」になってしまうような気がするのです。

 

私にも、ある患者さんの家族との思い出があります。

その患者さんは未成年の男性でした。

大学を中退し、独りで過ごしていることが多くなっていきました。

生活は昼夜逆転し、友人との交流もなくなっていました。

心配した彼の母親が処方箋をもって薬局に来られました。

手には、精神科クリニックの処方箋。

 

え…そんなに追い詰められているの?

と驚いたのです。

 

少し前に、本人に会った印象では、

普通の若い男の子、だったから。確かにおとなしそうだったけど。

 

思いつめたように、息子さんの処方箋を差し出す母親。

本人はいません。

私はそのお母さんに、そっと尋ねました。

「何がありましたか?」

すると、その母親は

「息子は大学を中退してから、お友達とも会わないし、

独りで映画を見に行ったりするんです。部屋で過ごす時間も多いです。

引き籠りになっていくような気がして。

心配になって精神科を受診させました…」

 

私は、余計なお世話かと思いながらも、答えてみました。

「それは、引き籠りではなくて、独り好きではないですか?」

 

…その瞬間、お母さんは目に涙を浮かべて、

「そう…なんでしょうか。そう考えてもいいんでしょうか」

と仰いました。

 

大学を中退し、友人のいない息子に育ててしまったと、

自分を責めて追い詰められていたのは、

お母さん自身だったのです。

 

 この時私は、

このままではお母さんも深みにはまってしまう

ような気がしたのです。

 

あまりにお母さんの顔が不安でいっぱいだったから。

まったく表情が無いのです。

 

 

お母さんにもお母さんの人生と生活があります。

いつまでも、息子さんを子供だと思わず、

息子さん自身に任せればよいと話しました。

自分の居心地の良い場所を探そうとしていると信じてあげてほしい、

そうしないと、お母さんも心が壊れてしまうから、と。

 

余計なお世話と分かっていながらも、

お母さんの話を聞いてみて良かったと思います。

誰にも相談できなかったようです。

お母さんは少し笑顔を取り戻して、帰っていきました。

 

その後、そのお母さんは薬局へ来なくなり、

息子さんは風邪をひいて薬局へ来た時にも、

気を病んでいる様子はありません。

お薬手帳を確認したところ、

精神科の薬を飲んでいる形跡も見当たりません。

 

それ以上、何も聞くことはありませんでした。

 

 

出会えてよかった本

 

私も中沢さんのようなタイプの薬剤師を目指しています。

 

話すのは私じゃなくて患者さん。

とにかく患者さんの話を聞くスタイル。

 

「またいつでも来てくださいね」

「次はお話の続きを教えてくださいね」

そう言って、見送るのです。

 

ただ、これだと本来の薬の話が少ないような気がしていて、

薬剤師としてこれでいいんだろうか?と

自信を無くしかけていたこの頃。

この本に出会えてよかったと感じています。

 

難しい話は必要ない。

町の薬剤師は、患者さんの相談相手になってこそ存在価値があるのかな、

と改めて自信を取り戻せるきっかけになりました。

中沢さんが救ってくれたのは、

歌舞伎町のキャバクラのお姉さんやホストさん達だけではありません。

 

私のような片田舎の調剤薬局薬剤師にも希望を与えてくれました。

救われた気がします。

感謝の気持ちを伝えたいくらい。 

 

中沢さんには、これからも頑張ってほしいと思います。

同じような志を持ち、私もせっせと頑張ります。

 

これからもこのスタイルで行こうっと。